労働者という商売が無くなった2035年以降の個人の生存戦略
労働者という商売がもうすぐ終わりそうだ。
単なる失業ではなく、他の生き方を模索しないといけないフェーズが来つつある。
資格系: 約300万~350万人 高度スキル系: 約300万~400万人 コミュニケーション系: 約500万~600万人
中国の友人と話した際に多くの人がこの点を懸念していたので、これは今の世界を生きる多くの人が感じている懸念なのだと思った。
自分も最近よくこのテーマについて考えているので、自分の考えの整理も兼ねてまとめてみた。
前半ではAI/ロボットによる労働者の代替について、後半ではそれを踏まえて個人が取る生存戦略の分類について書いている。
前半はどこでも言われている話なので、個人的には後半をぜひ読んでみて意見をもらいたい。
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AIとロボットが2035年には多くの労働者を代替しそうだ
自らの労働力を商品として労働市場で販売し雇用主に買ってもらうというモデルは、これまでの人類史で非常に人気な商売だった。
労働力という商品はニーズが強かったし、どんな人でも多くの形で自分の労働力を買いたい人を見つけることができたからだろう。
牛が畑を耕したり、蒸気機関が物を運んだり、コンピューターが計算をしたりするようになっても、色々なニーズに柔軟に応えられる人間の労働力という商品は根強い人気があった。
AIとロボットの進化と普及でこの状況は一変する。
「柔軟性」は人間の専売特許ではなくなった。
最近のChatGPTなどと会話すると、人間より遥かに色々なことを知っているし、どんな会話にでも何かしら対応してくれる。
2025年にAIエージェントが普及し始めると、AIは単なるチャット相手から、作業者に変わっていき、
「XXさんのメール対応しておいて」
「YYのプレゼン資料作っておいて」
「ZZの件を電話しておいて」
「今月の経費をシステムで精算しておいて」
などなど、様々なニーズに柔軟に対応してくれるようになる。
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もっと凄いのはロボットだ。
アメリカや中国では最近無人タクシーの運転が始まっており、運転という機能は人間の手を離れつつある。
物理的な世界で人間が担っていた大きな機能が機械に奪われるのは久々だが、自動運転車は運転しかできないので柔軟な労働力ではない。
物理世界で柔軟な労働力となるのが人型ロボットだ。
近年、テスラのOptimusやOpenAIが出資しているFigureに代表されるように、アメリカや中国で人型ロボットの開発が進んでいる。
それらのロボットは、人間のような運動能力(または、最近の犬型ロボットが実際の犬より高い運動能力を持ち始めているのと同様に、人間より高い運動能力)を持ち、脳には最新のAIを積み、物理的に動くAIとして機能する。
そのロボットたちは
「買い物して晩ごはん作っておいて」
「子どもの面倒見ておいて」
「建築現場で働いて」
「コンビニで働いて」
などなど、物理的に柔軟に何でも対応できる。
こうして、AIとロボットによって、人間の柔軟性の優位性は失われる。
そして、コスト面ではAIやロボットは圧倒的に低い。
例えばロボット本体が1000万円だとして、年間の電気代は100万円で5年間×24時間働けるとすると、時給は342円となる。
実際、テスラはロボットの価格を500万円以下にしようとしてるから、時給はさらに下がる。
どれだけ人間の手仕事のありがたみがあるとしても、これだけコストに差があると、人間の労働力という商品はずいぶん分が悪くなる。
こうしたロボットは2025年からテスト導入が進み、2026年からは一般販売も進んでいく。
いきなり人間と同レベルにならないにしても、10年後の2035年にはずいぶんと普及しているはずだ。
「そんなに早いの?」と思われるかもしれないが、ロボットがこれまでの技術革新と比べて特別なのは、ロボットはロボットを作ることができ、自己増殖するということだ。
つまり、ロボット1台を人間が作ったら、今度はそのロボットが生産者に回ってロボットを作ることができる。ロボットが増えればロボットをたくさん作ることができ、そのロボットたちがまたロボットを作るようになる。
この加速が始まれば、2035年に世界で数億台のロボットが稼働していることも十分可能になる。
参考までに、自動車は年間約1億台、スマホな年間約15億台が出荷されているそうだ。
(ただし、ここでは2035年という具体的なタイミングは大事ではない。個人的な目安としてそれぐらいと思っているので便宜的に置いている。区切りも良いしね)
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個人の生存戦略を考える
真に考えるべきは、このように労働力という商品がほとんど売れなくなる未来がほぼ確実な中で、僕ら労働者は今後の生存戦略をどのようにするかだ。
マクロにこの世の中、日本をどうするか、という話ももちろん大事だが、いったん今回はミクロな個人の生存戦略に話を絞る。
現在の労働者が今後取りうる戦略は概ね以下の通りだ。
① 労働者という商売の中で残るニッチ市場を勝ち取る
② 起業して労働者以外の商売を始める
③ 投資家として生計を立てる
④ 生活保護を受ける
⑤ 誰かに養ってもらう
⑥ 貨幣経済から離脱する
② 起業して労働者以外の商売を始める
③ 投資家として生計を立てる
④ 生活保護を受ける
⑤ 誰かに養ってもらう
⑥ 貨幣経済から離脱する
前提として、対象はAIとロボットがある程度普及して従来の人間の労働力はほとんど代替された2035年以降の日本とする。
(それまでの10年の移行期は色々な選択肢があるだろうが、移行期が終わると上記の戦略に収斂すると考えている)
自分は、②の起業+③の投資家をメインとし、そこに⑥の貨幣経済からの離脱を添えるような形でいくことをイメージしている。
以下にそれぞれの生存戦略の内容を整理してみる。
他にこんな戦略もあるのでは?というものがあればぜひ教えてほしい。
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戦略① 労働者という商売の中で残るニッチ市場を勝ち取る
これは結局ある程度は残るだろう。
(そういう意味で、このブログのタイトルは誇張している)
(そういう意味で、このブログのタイトルは誇張している)
労働者という商売でいうと、以下の3つは商売として残りそうだ。
- 資格系
(医者や弁護士など) - 高度スキル
(深い専門知識でAIやロボットを開発したり使いこなしたりする、AIの高度な思考を人間に分かるように通訳してあげる、など) - コミュケーション系
(保育、介護、接客、芸能など)
資格系は労働者としての人間の牙城として残るが、医者や弁護士の競争倍率は今の何十倍もに上がりそうに思える。
高度スキル系やコミュケーション系もいずれロボットなどに代替されうるだろうが、その他の労働者と比べると代替までに時間はかかりそうに思う。(2040〜2045年ぐらいまでは持つか?)
特にコミュケーション系は必要な労働者数も多く、その職業を担うハードルも相対的には低いので、しばらくの人類の生存戦略として主なものになりそうだ。
(ただ、そうするとこの職業に就きたい人が大量に現れ、職を得る競争は厳しくなりそうだが。)
ChatGPTによる試算:
カテゴリごとの2035年時点の就業者数は以下の通りで、合計で約1400万人となる。
既存の2035年時点の日本の労働者数予測が6000万人なので、1300万人を引いた残りの4700万人は仕事を失う可能性が高い。
2035年時点ではこの内仕事を失っている割合が30%だとしても約1400万人は失業する。
この戦略を取るには:
- 専門性や資格を身につける
- 厳しい競争を勝ち抜く
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戦略② 起業して労働者以外の商売を始める
これは今よりやりやすくなるだろう。
AIやロボットを使うことで、今までより少ない資本で事業を開始できるようになるし、AIやロボットを発端にした大きな社会変化が始まるのでビジネスのチャンスはゴロゴロ転がっているようになる。
売上が何百億円も無くても、自分と家族が生活していけるような範囲の商売を作って担っていく人は増えていくように思う。
(例えば、ロボットを調理や接客に用いた小規模な飲食店を経営することは、そこまで難しく無さそうに見える。)
これまで労働力を売って暮らしていた多くの人は、この戦略への変更をチャレンジを求められるようになるが、チャレンジした結果、労働者時代よりも良い生活をできる人も多く出てくるだろう。
(自分の時間を売る労働者に比べて、例えば上記のような飲食店をうまく作れたら、自分はほとんど働かずに収入を得ることができるので、少なくとも時間の面での豊かさは上がるだろう)
この戦略を取るには:
- 自分で起業して商売を始めるためのスキルや知識や経験を身につける
- 起業に必要な資金や信用を蓄える
- 起業するテーマを探したり、小さく検証を始めたりする
起業することやビジネスを始めることについては、既に世の中に方法論が多くあるので、それらを学んでいけば、思ったよりハードルは高くないはずだ。
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戦略③ 投資家として生計を立てる
個人的にはこれはけっこうおすすめしたい。
なぜなら、ここまで書いてる通り自分はAIとロボットの大きな成長を確信しているので、それらの領域に投資をすれば高いリターンが得られると信じているからだ。
NVIDIA社がここ数年で大きく成長したことは皆さんご存知のとおりだし、これはAI/ロボット革命の序章に過ぎないことも散々言われていて、自分もそのとおりだと思っている。
AIやロボットが既存の労働市場を喰らい尽くすほど成長するなら、そのビジネス的な成長幅は驚くほど大きい。
投資家と言っても、株式投資を可能な範囲で始めるぐらいで良いと思う。
この戦略を取るには:
- 投資に回せるお金を確保する(大事)
- 投資の基本的な事項を学ぶ
- 投資を始めて続ける
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戦略④ 生活保護を受ける
この戦略を取る人、取らざるを得ない人は随分と増えてくるだろう。
生活保護の仕組みがあり、この戦略が選択肢として残るだけでも、日本人は恵まれている。
AIやロボットに多くの人の仕事が無くなったら、ベーシックインカムの検討も進むだろうが、財源の問題もあり、少しずつ限定的にしか進まないと考えている。
2035年段階では、今の生活保護制度が少し拡充されるぐらいで、制度上の大きな変化は起きていないだろう。
財源が足りなくなる分は、AI/ロボットの利用により儲かるようになった企業からの課税などを強めてどうにかするのだろう。
この戦略を取るには:
- 生活保護の制度について調べる
- いざという時に躊躇わずに制度を利用する
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戦略⑤ 誰かに養ってもらう
生活保護に似ているが、これは家族など誰かに養ってもらうことをイメージしている。
特に、2035年にまだ社会に出ていないような世代の子どもたちは、現実的に他の戦略を取ることが難しいため、この戦略を取らざるを得なくなるだろう。
そういう意味では、2025年時点で社会に出ている世代の人たちは、それだけでアドバンテージがあるとも言える。
この戦略を取るには:
- 養ってくれる相手を確保する
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戦略⑥ 貨幣経済から離脱する
これは、農業や狩猟採集をして自給自足の生活をするようなことを意味している。
この戦略を取る人もある程度は増えてくるように思える。
日本では農業人口が減少しているため、これからさらに人口が減っていく中で、自分が食べていくだけの食料を自給自足で確保することは完全に無理な選択肢ではない。
(そういう意味で、温帯で水も豊かな日本に住む人は恵まれている)
ChatGPTによる試算:
- 合計で1~3ヘクタール(10,000~30,000㎡)程度の農地や山林が、自給自足でほぼお金を使わない暮らしを日本で送る際の現実的なスケール感
- 耕作放棄地であればタダ同然で手に入れられるかもしれないが、そうでない場合、中山間地域や過疎地域であれば数百万円程度、都市近郊では数億円程度の購入費用が必要
ただし、商業用の農業がロボットで効率化された未来では、農作物の価格は大きく低下することが見込まれるので、自給自足で余った作物を販売して現金を得るようなことはほぼ不可能と考えた方が良い。
なので、建物や衣服、エネルギーなど多くのものを自給自足しなければいけない。
そうすると、税金をどうやって収めるのかなど問題も出てくるが、それはいったん置いておこう…
この戦略を取るには:
- 農業や狩猟採集を学ぶ
- 農地や山林の購入資金を蓄える
- 農地の購入資格を得る
- 衣食住やエネルギーを自給自足する術を学ぶ
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ここまで書いてて、ちょっとポジティブに感じられる部分もあれば、暗い気持ちになることもあった。
正直どの戦略も簡単ではない。が、AI/ロボット革命の流れは誰にも止められないので、生き残るためにはどれかを選ばないといけない。
あなたはどれを選ぶだろうか?
このブログが、これからの未来を考えてただ暗い気持ちになってしまいそうな時に、
自分が取るべき戦略を冷静に考え、行動に移していくためのきっかけになれば嬉しい。
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